カテゴリ: 『その便秘こそ大腸ガンの黄信号』(祥伝社)

この記事は私が2001年7月に上梓した一般人向けの本『その便秘こそ大腸ガンの黄信号』(祥伝社)からの抜粋です。昔の記事ですので今の考え方と違うところもありますが、あえて訂正せず原文のままでご紹介します。
その便秘こそ大腸ガンの黄信号

その便秘こそ大腸ガンの黄信号
 
  

あ と が き

 大腸ガンと便秘は、ほぼ同時に増えてきました。大腸ガンで命を落とす人をゼロにしたい。それと同時に、大腸ガンの原因となる便秘を解消したい。そういった願いをこめて、私はこの本を書きました。
 本書で繰り返し述べてきたとおり、食生活環境の欧米化に伴って日本人の食事は肉食中心となり、食物繊維の摂取も不足しています。さらにストレス、ダイエット、下剤の乱用、抗生剤、ビールなど、現代人の生活には、腸の環境を悪化させる原因がたくさんあります。それによって、若い人の腸内細菌環境までも、ウェルシュ菌や大腸菌といった悪玉菌優位の状態に変化して便秘となり、腐敗ガスの多い汚い腸になってきています。便秘がちで汚い腸の人は、便秘・大腸ガンになりやすいというだけでなく、頭痛や腹痛、ニキビや肌荒れ、また体臭や口臭がひどくなるなど、さまざまな症状に悩まされます。
 食生活習慣は時代の要請でもあり、一筋縄ではいかない問題だったのが、それを腸内環境の問題に置き換えると一転してシンプルな問題となります。便秘を解消し、大腸ガンになりにくい体質を作るためには、腸内環境を整えて、ビフィズス菌優位のきれいな腸を回復すればいいのです。それを短期間で行う画期的な方法が「腸洗浄」です。
 また、大腸ガンでぜったい死なないための保険として、三五歳を過ぎたら、少なくとも五年に一度の大腸内視鏡検査をお勧めします。今まで検査に恐怖心があった人や一度受けて懲りた人も、「水浸法」という大腸内視鏡検査法でやれば全く苦痛がありません。
 生まれついての便秘の人や、これまでどんな方法でも治らなかったような深刻な便秘の人は、腸の形が捻れていることがあります。「αループ法」は、腸の形を整える内視鏡的便秘治療法です。腸洗浄は自宅でもできますし、無痛大腸内視鏡検査では腸洗浄・水浸法・αループ法を一度に行います。
 本書を読んで腸洗浄によって便秘が治ったり、無痛大腸内視鏡検査を受けて大腸ガンが早期発見されて助かったという読者が出てくれば、筆者としてはこれ以上の喜びはありません。みなさまの健康を心よりお祈りしつつ、拙文を最後まで我慢して読んでいただいたお礼を申し上げます。
 本書の執筆に当たって、第一会理事長・鎌形勇先生には、多大なご協力をいただきました。改めてお礼を申し上げます。また、お忙しい中、貴重な推薦文をお寄せいただいた、高野良裕先生、阿部知子先生には、この場を借りてお礼申し上げます。

医師  後藤利夫

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この記事は私が2001年7月に上梓した一般人向けの本『その便秘こそ大腸ガンの黄信号』(祥伝社)からの抜粋です。昔の記事ですので今の考え方と違うところもありますが、あえて訂正せず原文のままでご紹介します。
その便秘こそ大腸ガンの黄信号

その便秘こそ大腸ガンの黄信号
 4章 きれいな腸を取りもどそう
  (1)悪玉菌が引き起こす腸内汚染とは

腸内汚染の原因、悪玉菌

一方、ウエルシュ菌に代表される悪玉菌は、腐敗菌、ガス産生菌ともいわれます。
腸の中の菌が悪玉菌優位だと、便秘になる、大腸ガンになりやすいことのほかにも、ガスがでる、ガスが臭い、おなかが張る、おなかが痛い、口臭がする、体臭がする、肌が荒れる、頭が痛い、など様々な症状の原因になります。
赤ちゃんのときは、ビフィズス菌が優位だったのに、だんだん年を取るにつれ、悪玉菌が増えてきます。善玉菌優勢から悪玉菌優勢に変わることを菌交代といいます。最近、生活環境の変化に伴って、比較的早い時期に菌交代が起こるようになってきているようです。つまり若い人に悪玉菌が増えているということです。悪玉菌は、人間にとって有害な物質を作りますので悪玉菌の多い腸は、有害物質や有害ガスで汚染された腸です。有害物質は大腸粘膜の豊富な血管から血液中に溶けて、全身に運ばれます。有害物質が肺から排泄されたら口臭になりますし、皮膚から排泄されたら体臭や肌荒れの原因になります。こういう汚い腸が腸の中だけでなく、全身を汚してしまうのです。
どうして、菌交代は早くなったのでしょう?
大腸ガンや便秘のときと同じく、ここでも食生活の欧米化が原因です。悪玉菌は、タンパク質を栄養として生きていますので、肉食中心の人の腸内腸内に多くいます。米やいも、豆などの炭水化物が中心の人には、炭水化物を栄養とする善玉菌が多くいます。食事の内容が欧米化すると早い時期に菌交代が起こってしまします。食物繊維が摂取量が少ないのも菌交代を早める一因です。
他にも、ダイエットは菌交代を早めます。飢餓状態は、大腸の中の便を空っぽにしてしまいます。大腸の中にはふつういつも1kg以上の便があり、そのおよそ半分は腸内細菌なのですが、ダイエットをして飢餓状態になると、腸が空っぽになります。100兆あった善玉菌優位の腸内細菌が少なくなると、その後で分布が一気に悪玉菌優位に傾いてしまうのです。
下剤の乱用も同じ理由で、菌交代を早めます。便秘のあとの下痢状態が便と一緒に善玉菌も排泄してしまい、腸が空っぽになってしまうのです。善玉菌が少なくなると、悪玉菌が勢力を伸ばします。
このほかに、抗生物質も菌交代を早める大きな原因となっています。かぜでも何でもちょっと熱がでるとすぐに抗生剤が処方されます。確かに悪い菌は死にますが、口から飲んだ抗生剤は腸の中も通りますので、腸内細菌はみんな死んでしまいます。善玉菌がいなくなると、その勢いをかって悪玉菌が増えるのです。
大腸ガンを引き起こす悪玉菌とは、いったいどんなものなのでしょう。
腸内菌には非常に多くの種類があるのですが、大別すると乳酸菌と腐敗菌とに分類されます。乳酸菌は主に炭水化物を食べる善玉菌で、腐敗菌はタンパク質を食べます。これが悪玉菌と呼ばれるようになります。
腐敗菌がタンパク質を分解すると、アンモニア、硫化水素、フェノールアミン、インドールといった物質ができますが、オナラや便の悪臭は、これらが原因になっています。
臭いだけならまだしも罪は軽いのですが、このうちフェノールアミンやインドールは、大腸ガンを引き起こす発ガン物質なのです。
さらに大腸内にはガンを引き起こす物質が作り出されています。それは二次胆汁酸です。
胆汁は主に脂肪を消化する消化液で、胃に脂肪を含んだ食物が入ると、自動的に分泌されます。脂肪の量に敏感に反応する特徴があり、肉など脂肪の多い食品を消化するときは、胆汁の貯蔵場所である胆のうの活動が盛んになります。
胆汁酸は、小腸で脂肪の消化を手伝い、それを終えると一部は吸収されて、製造元である肝臓に戻ります。しかし、食べた脂肪の量が多いときは、分泌された胆汁量も多くなるために、その一部が大腸に流れ込んでしまうのです。
大腸の中にはウェルシュ菌や大腸菌といった腐敗菌があり、これらが流れ込んだ胆汁酸に作用することによって、胆汁酸は二次胆汁酸に変換されます。この第二次胆汁酸もまた恐ろしい発ガン物質なのです。
腸内の細菌叢を善玉菌に変えることは便秘治療の第一歩ですが、同時に大腸ガン予防の第一歩でもあるのです。

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この記事は私が2001年7月に上梓した一般人向けの本『その便秘こそ大腸ガンの黄信号』(祥伝社)からの抜粋です。昔の記事ですので今の考え方と違うところもありますが、あえて訂正せず原文のままでご紹介します。
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 4章 きれいな腸を取りもどそう
  (1)悪玉菌が引き起こす腸内汚染とは

ビフィズス菌の効用

人間の大腸には膨大な数の細菌があり、その数は約一〇〇兆個といわれています。人体を構成している細胞が約六〇兆個ですから、それをはるかに超える細菌が、すべての人の腸内には棲んでいます。
これらの細菌類を総称して「腸内菌叢」とか「腸内フローラ」というような呼び方をしています。叢とは草むらとか花畑の意味で、無数の細菌が棲息していることを意味しているのでしょう。一方、フローラにも植物相という意味があります。われわれの腸内には、細菌叢という名の「自然」が棲息しているのです。
腸内細菌は、人間が分解、吸収できなかった食物残さを分解し便の貯蔵、発酵防止に一役買ってくれるものもあるのですが、一方で毒素や発ガン物質を作ってしまう酵素もあります。
このうち、人体の味方になる菌を善玉菌といい、その代表が乳酸菌やビフィズス菌です。
ビフィズス菌をはじめとする善玉菌は、ビタミン類の合成や食べ物の消化吸収の補助などのほか、整腸作用、毒素や発ガン物質の生成を押さえる働きもあります。
生まれたばかりの赤ちゃんは、菌を持たないのですが、お母さんのミルクを飲み始めると、ビフィズス菌が増え始め、しばらくは安定した腸内環境を保ちます。

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この記事は私が2001年7月に上梓した一般人向けの本『その便秘こそ大腸ガンの黄信号』(祥伝社)からの抜粋です。昔の記事ですので今の考え方と違うところもありますが、あえて訂正せず原文のままでご紹介します。
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その便秘こそ大腸ガンの黄信号
 4章 きれいな腸を取りもどそう
  (1)悪玉菌が引き起こす腸内汚染とは

「宿便」とは何か?

「宿便」という言葉をご存じでしょう。しかし医学用語では、宿便というものはありません。
一般的な宿便のイメージは、大腸の粘膜に、何年も便がこびりついているイメージですが、そういう宿便はありません。
大腸内視鏡で、腸を覗くと、大腸粘膜はつるつるしています。
こびりついてとれない便など全くありません。もしあったとしたら、大腸は水分吸収などできないでしょう。逃げ場もないので、古い便は新しい便に押されてトコロテン式に押し出されます。
ただし、年輩の方には大腸の筋肉の薄いところが、外に飛び出して「憩室」と呼ばれる陥凹が腸にできてしまうことがあり、その中に入り込んだ便が石のようになって、「憩室糞石」と呼ばれることがあります。量も少なく「宿便」とは呼べません。
大腸は、便を溜めておく場所であり、常に1キログラム以上の便がありますが、実はそのうちおよそ半分は腸内細菌の重さです。
私は、大腸内に常時溜まっているこの便と腸内細菌のことを宿便と表現しています。
宿便は、多くても少なくても体に良くありません。常に一定の量があって、絶えず流れているのが、自然な姿です。便秘で1週間もため込んだあとで、下剤で一気に全部出す、というようなことをやっていると、大腸細菌のフローラは安定しません。悪玉菌が増えるきっかけを与え、結局便秘がひどくなる悪循環をとります。
宿便中に存在する、大量の腸内細菌とはどういったものなのでしょうか?

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この記事は私が2001年7月に上梓した一般人向けの本『その便秘こそ大腸ガンの黄信号』(祥伝社)からの抜粋です。昔の記事ですので今の考え方と違うところもありますが、あえて訂正せず原文のままでご紹介します。
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その便秘こそ大腸ガンの黄信号
 3章 まずは便秘の予防から
  (2)「ダイエット便秘」が急増中

朝の一杯の水から

ダイエット中、空腹をがまんするのはしょうがないですが、のどの渇きはがまんしてはいけません。
便がでなくなってしまします。
ダイエット中は食べる量が減るため、食べ物の中に入っている水分も少なくなります。その分意識的に水分を取らないといけません。脱水状態だと、大腸は便から一生懸命水分を吸収するので、便は乾燥してカチコチになります。
特に夜間は水分が失われるので、朝の一日の水の補給は便秘予防に大切です。
また朝、空腹の胃に食べ物が入ると、その刺激が自律神経を通して大腸に伝わるからです。これを、胃・結腸反射と言います。大腸も目覚め、自然と便を前に送り出す蠕動運動を開始します。
こうして一杯の水を飲むだけで、排便はずっと楽になってきます。

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