この記事は私が2001年7月に上梓した一般人向けの本『その便秘こそ大腸ガンの黄信号』(祥伝社)からの抜粋です。昔の記事ですので今の考え方と違うところもありますが、あえて訂正せず原文のままでご紹介します。
その便秘こそ大腸ガンの黄信号

その便秘こそ大腸ガンの黄信号
 4章 きれいな腸を取りもどそう
  (1)悪玉菌が引き起こす腸内汚染とは

「宿便」とは何か?

「宿便」という言葉をご存じでしょう。しかし医学用語では、宿便というものはありません。
一般的な宿便のイメージは、大腸の粘膜に、何年も便がこびりついているイメージですが、そういう宿便はありません。
大腸内視鏡で、腸を覗くと、大腸粘膜はつるつるしています。
こびりついてとれない便など全くありません。もしあったとしたら、大腸は水分吸収などできないでしょう。逃げ場もないので、古い便は新しい便に押されてトコロテン式に押し出されます。
ただし、年輩の方には大腸の筋肉の薄いところが、外に飛び出して「憩室」と呼ばれる陥凹が腸にできてしまうことがあり、その中に入り込んだ便が石のようになって、「憩室糞石」と呼ばれることがあります。量も少なく「宿便」とは呼べません。
大腸は、便を溜めておく場所であり、常に1キログラム以上の便がありますが、実はそのうちおよそ半分は腸内細菌の重さです。
私は、大腸内に常時溜まっているこの便と腸内細菌のことを宿便と表現しています。
宿便は、多くても少なくても体に良くありません。常に一定の量があって、絶えず流れているのが、自然な姿です。便秘で1週間もため込んだあとで、下剤で一気に全部出す、というようなことをやっていると、大腸細菌のフローラは安定しません。悪玉菌が増えるきっかけを与え、結局便秘がひどくなる悪循環をとります。
宿便中に存在する、大量の腸内細菌とはどういったものなのでしょうか?

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