この記事は私が2001年7月に上梓した一般人向けの本『その便秘こそ大腸ガンの黄信号』(祥伝社)からの抜粋です。昔の記事ですので今の考え方と違うところもありますが、あえて訂正せず原文のままでご紹介します。
その便秘こそ大腸ガンの黄信号

その便秘こそ大腸ガンの黄信号
 3章 まずは便秘の予防から
  (2)「ダイエット便秘」が急増中

痩せると腸が伸びて便秘になる?

あまり知られていませんが、人間の腸は、ダイエットすることによって伸びてしまうのです。腸は、ハウストラというアコーディオンのジャバラのような構造になっていて、腸壁の外側(ジャバラの谷間の部分)には脂肪が着いています。
ところが、痩せて脂肪が減ってくると、この脂肪によって作られていたジャバラの谷間の部分がなくなって、全体が長く伸びきってしまうのです。
腹部は痩せて小さくなっているのに、腸はどんどん長くなってしまうのですから、大腸はお腹の中で折りたたまれた状態となります。それに、腸の長さが長くなれば、それだけ便は長時間滞留しますから、ますます便の水分が吸収されて、便通が悪くなるのも当然の結果でしょう。
やせている人には胃下垂が多いと言われますが、それは、内臓を支えるべき腹直筋が、痩せすぎることによって胃を支えていられなくなったことによって腹腔の下まで下がるわけで、胃下垂に伴って、腸も下がってしまいます。
大腸は右腹にある「上行結腸」と、左腹の「下降結腸」の部分は固定されていますが、横に通っている「横行結腸」は固定されていないので、そこが腹腔の下部までグッと垂れ下がります。これが腸下垂です。
腸下垂が起きることによって、便秘はますますひどくなり、やがて下腹部が張ったり痛んだりするようになります。やせている人で食後、お腹の真ん中あたりがひどく張り、痛見もあるようだったら、腸下垂を疑うべきです。

★図版(ハウストラの脂肪の有無による変化と、腸下垂イラスト)

このように女性の便秘の原因は、第一にダイエットによる食事の量の減少による便の量の減少、第二は、ダイエットと腸が伸びてしまったことに伴う腸下垂。そして第三の原因として挙げられるのが、ダイエットのために下剤を濫用したことによって起こる便秘です。
「ダイエットでスリムな体型になりたい」と熱望する女性たちの中には、便秘そのものを極端に恐れる人も少なくありません。
何より「余計なものが詰まっているお腹をへこませたい。膨らませておきたくない」「便さえ出れば、その分体重が減る」と強く思っているからです。
そこで、大量に下剤を飲むのです。これが便秘をひどくすることは前に述べました。

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