第1部  大腸内視鏡の技術について 父が大腸癌になって、私は内視鏡医になりました。 大腸癌は大腸内視鏡を最低5年に一度受けていれば死なない病気ですが、残念ながら検査を受けたことのある人は日本人の4人に一人です。 検査を受けない最大の理由は検査に伴う苦痛です。 そのため、無痛内視鏡検査の開発が必要でした。 胃カメラでは麻酔法が効果的なので、大腸内視鏡も麻酔法が使われました。 しかし、大腸の粘膜は胃の粘膜と違って薄いので、腸が破れやすく、3000件に1件の割合で穿孔事故が起きました。 そこで無麻酔無痛大腸内視鏡の「水浸法」が開発されました。 そもそも腸はつまんでも痛みを感じませんが、引き伸ばされると痛みがでます。 さらに引き伸ばされると穿孔します。 腸内に空気の代わりに水を入れるとスコープに浮力が働き軽くなります。 また、空気より水の方が滑りがよりので押す力が少なくて済みます。 そうすると腸が引き伸ばされないので痛みがありません。 苦労の上、やっと無麻酔無痛の大腸内視鏡が完成しましたが、それでも検査を受ける人は急には変わりません。 検査を受けない4人に3人を大腸癌からどのようにして救えばいいのか? そうしてやっと、腸内環境にたどり着きました。 腸内にいる細菌がどのようになっているかが大事だったのです。 第2部 腸内細菌に関する知見 腸内細菌は知れば知るほど、健康に大切なものでした。 腸の調子が悪く、下痢が続けば、腸内細菌を失い、腸に炎症を起こします。 便秘が続けば腸内が腐敗し、毒物がたまり、やはり腸に炎症を起こします。 慢性的な腸の炎症は、大腸癌のリスクを高めます。 整腸作用は、下痢や便秘を抑えて腸の調子を整える働きですが、腸の炎症を抑え、大腸癌のリスクを減らします。 また、腸内環境は体の免疫力に影響します。 たとえば、乳酸菌の作り出す多糖(菌体外多糖EPS)は厚い粘液層を作って腸の粘膜を守ります。 また、NK細胞などの免疫細胞を強化して免疫力を高めます。 つまり、腸内環境は、腸内に留まらず全身に影響するのです。 ところが、現代は腸内環境が劇的に悪化の一途をたどっています。 なぜでしょうか? 腸内環境は人間が代々生きてきて、ずっと変わらず何万年も受け継がれてきました。 親から子へ、特に母親から子どもに受け継がれてきたと考えられます。 人間だけではありません。多くの哺乳類は胃や腸内に乳酸菌などの発酵菌がいないと健康を維持できません。 コアラがユーカリの葉の青酸という毒物を解毒できるのは、赤ちゃんの時に母親の袋の中で便を食べるからです。 牛も胃内に様々な微生物がいてやっと草(セルロース)を分解できるのです。 ところが現代は、菌は不潔なもの、不要なものとして抗菌、除菌がブームになっている感さえあります。 100万年洞窟で暮らしてきた人間が、急に生き方を変え、菌とつきあわなくなりました。 菌は母親の胎内では無菌ですが、まず生まれてくるときに膣の中で感染します。 また、生後も赤ちゃんの時に口から感染します。 赤ちゃんが何でも口に入れたがるのは、母親の腸内細菌を受け継ごうとする本能的行動です。 それを阻止したり、床までアルコールで拭いてしまえば赤ちゃんは大事な菌を受け継げなくなります。 帝王切開で生まれた赤ちゃんに生後すぐに赤ちゃんの口に膣液のついたガーゼを当てるところも増えています。 日本は昭和30年代以降、下水道が整備され、井戸水を飲まなくなりました。 衛生状態が劇的に改善され、ピロリ菌の保菌者も減りました。 ピロリ菌は胃がんを起こす悪い菌でそれの感染が予防できたことはいいことですが、そのかわり同じ感染経路である腸内細菌が感染できなくなって様々な病気が増えました。 食物アレルギー、花粉症、アトピー性皮膚炎、喘息などのアレルギー疾患、自己免疫疾患、潰瘍性大腸炎やクローン病などの慢性腸炎、様々な新しい感染症とくにウイルス性疾患、大腸癌やその他の癌・・・ これらは、子どもの時に母親からうまく腸内細菌を受け継げなかったせいの可能性があります。 便移植といって、健康人の便をカプセルで飲む治療が効果があったりもしますが、成人では子どもの頃と違い、免疫機能は完成していて、新しい菌を排除する可能性が高いです。 子どもの時は、免疫寛容と言って、外からの異物に対して受け入れてくれるので腸内細菌が引き継げるのです。 子どもの時は、免疫細胞もナイーブT細胞という生まれたてのものが多く、それがTレグ細胞という免疫を抑えるものに変化して、免疫寛容を起こすのです。 子どもの時にいろいろな細菌と出会わないと、Tレグ細胞の代わりに攻撃性をもつヘルパーT細胞となり、免疫の過剰攻撃が始まります。体内に慢性炎症を起こし、アレルギーや癌を誘発します。 このほか、高齢出産、ストレスや暴飲暴食による下痢や便秘、偏食(とくに高タンパク食、低繊維食)、運動不足によるリンパ液の循環不良なども腸内環境を悪化させる現代の要因です。 このような現代にあって、腸内環境の重要性は増すばかりです。 今こそ腸内細菌の正しい知識と理解をもって、自分の健康は自分で守るセルフケアをしましょう。 腸内環境のセルフケア、つまり「腸活」は現代のキーワードだと思います。 (著書)「乳酸菌がすべてを解決する」(アスコム社)
新宿大腸クリニック院長 後藤利夫

11月23日の 胃がんと大腸がんを予防しよう 毎日の生活と早期発見講座(一般人向け)
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2019/11/23 土曜 13:30~15:00
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℡ 03-3344-1946 Fax 03-3344-1930
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